BEYOND THE IDOL

 第九章 ◆ 多種多様なアイドルグループを見つめて(前編)



 今回は、'70年代から現在までの様々なアイドルグループを取り上げてみたいと思います。
 グループとはいえ、その最小単位は二人組。デュオやコンビというスタイルですね。それこそ古くはザ・ピーナッツ……なんて名前を挙げてもいいのですが、極端に古いのでリンリン・ランランを起源としてみましょう。それも乱暴なので、ザ・リリーズから入っていくことにしましょう。
 このザ・リリーズは、つばめ奈緒美とつばめ真由美の双子の姉妹なわけですが、この双子という組み合わせは後のデュオのスタイルの定番となっていきます。もちろん、赤の他人のデュオも多く存在しますが、掴みとして双子あるいは姉妹という売り方は魅力的だったのでしょう。
 その後'76年にピンク・レディーがデビュー。もう語るまでもないスーパーアイドルで、その名を知らない人はいないでしょう。元々はオーバーオールを来た垢抜けないフォークデュオとしてスタ誕で勝ち上がったのに、デビューしたらミニのワンピースを来たアイドルポップスグループに転身。
 その人気は数々の歴代レコードセールス記録を塗り替え、いまだに歴代一位なんて記録があるかもしれません。また、その強い印象とは裏腹に実際の活動期間は約5年……いや絶頂期は77年~'78年の2年程度かもしれません。それだけ濃い活動と鮮烈な印象、誰の心にも残る完成度だったのでしょう。
 特にピーク時とも言える'78年の大晦日。紅白歌合戦を辞退するという前代未聞の立ち回りと、その裏でチャリティーコンサートを開く彼女たちのアイデンティティは、その瞬間的な話題性以上の、アイドルとしての存在意義を神格化したと思っています。
 もちろん、このピンク・レディーによる社会現象以降、いくつかの似たようなグループが登場します。キャッツ・アイやキューピットなどですね。どうしても、ピンク~をキワドくしただけのような印象もあり、低年齢層に支持されていくピンク~と違う路線だったと言えるかもしれませんね。
 もうひとつ同時期の異色デュオとして、ビューティ・ペアなんてのもいましたね。女子プロレスラーの二人組ですが、この路線はゴールデン・ペアやクイーン・エンジェルス、そして近年(?)ではクラッシュ・ギャルズへの系譜。ま、最近はあまり聞きませんが、外せない路線と言えるでしょう。
 '80年代になるとピンク・レディーの呪縛か、名を馳せるデュオが登場してきません。ひょっとすると、自分的な印象からすると、'80年代を代表するデュオは……春やすこ・けいこ? なんてことはありません。たぶん、'84年のキララとウララの登場まで待たなければならないのかもしれませんね。
 ご存知、小室哲哉の奥さんだったキララこと大谷香奈子とウララ(天野なぎさ)のデュオ。それこそピンク~ほどのヒットは望めるべくもなく、シングル数枚でフェードアウトしてしまった気がします。
 また'80年代をマジで代表しそうな……あくまでしそうな……アイドルデュオとしてはポピンズが挙げられるでしょう。デビュー曲「妖精ポピンズ」の楽曲・ビジュアル・プロモーション等はかなり完璧であり、この路線でいけば間違いなく'80年代の代表格になっていたはずですが……。なぜか失速。残念でなりません。同じ一発屋的なスタンスだとBaBeというデュオもいましたね。
 それとは別に、微妙に期待していたのがPunpKin。歌も踊りもそこそこ、ルックスはまぁまぁなんですが……って言うとあまりにもぼちぼち過ぎる印象ですが、水谷麻里のバックで本人よりも目立たんとばかりに一生懸命踊ってた頃からの成り行きから要注目でしたが、パッとしなかったですね。
 やはり'80年代最強のデュオはうしろゆびさされ組でキマリですかね。ゆうゆこと岩井由紀子と高井麻巳子の二人組。言わば、おニャン子クラブからのシャッフルユニット(?)なわけですが、いまだに彼女たちを最高峰と語る元ファンは多いですね。
 その人気に張り合えるとしたら、別項でも書いたWinkでしょうか。無表情に踊る様をとやかくいう向きはありましたが、彼女達の存在感こそアイドルらしいアイドルだったということに異論は無いでしょう。
 '90年代に入ると、個人的に印象が薄いデュオ群ですが、話題性としてはKEY WEST CLUB、あるいはこんぺいとうくらい? それだけデュオ業界にとって、印象深さや話題性などが感じられない時期だったのかもしれませんが、私が失念しているだけかもしれません。それこそ、その次はあいぼん&のののWと言ってしまっていいのでしょうか。
 次に三人組。トリオという形態です。
 もちろん、分かりやすい原点はキャンディーズ。ぼちぼちだったデビュー当時からのメンバーの立ち位置(センター)を、スーちゃんからランちゃんに変更することによりヒットを連発……。なんて話題はアイドルマスターとしては押えておくべき雑学……いや基本かもしれません。
 前述のデュオにはない三重唱によるメロディ&ハーモニーのバリエーションは、メインボーカルとバックコーラスという役割分担や輪唱形式など、変化に富むことによる醍醐味があります。キャンディーズは、そのスタイルを余すところなく実践していた感があります。ある種の完成形だったと言えるのかもしれません。
 キャンディーズ解散後、あろうことかキャンディーズJr.として売り出し始めた三人組(ミッチ・マミ・クーコ)が、キャンディーズファンの猛反発を食らいトライアングルと改名してデビューした……なんてホントかウソか分からんような話題を振りまく事態もありました。
 また、人気者の存在にはエピゴーネンというかフォロアーの存在はつきもの。フィーバー(北川まゆみ・渡井なおみ・岡広いづみ)をはじめ、ギャル(マミ・ヒー・ミチヨ)、アパッチ(ヤッチン、ミッチ、アコ)あたりがそんな感じでしょうか。やはり前述のピンク~のフォロアーと同じように、ケバさやエロさみたいな色合いが強く出されている感じも否めず、いずれも長続きしなかったようです。
 '80年になると三人組はそこそこ登場してきます。
 まずは宇宙三銃士スターボーCHASER。いきなりそこかっ……って気もしますが、ハヤト、ヤエト、イマトの三人組。細野晴臣プロデュースということで話題をさらうも、そのキテレツさに皆唖然。なにせ、地球人にAI(愛)を伝えにどこぞの星からやって来たらしく……、これはへきる星やこりん星の系譜の開祖と言って良いでしょう。2ndシングルから早くも地球人に帰化。ブリブリのアイドル路線に変更してた気がします。
 正当なアイドル路線といえばソフトクリーム(遠藤由実子・大塚真美・天野千英)。後藤次利がアイドルソングを手がける試金石的グループでもあり、それなりの楽曲を聴くことができます(とはいえ、想像の範疇って感じですが)。CMソングも歌うほどまでメジャーになりつつも、エンポコこと遠藤由実子へのフォーカス具合が際立つほどグループとして機能しなくなってきちゃってるんじゃ……なんていらぬ心配をしていたらソロになったのか解散しちゃったようです。
 一人だけ目立ってしまうといえば、麻生真美子&キャプテン。元々松本伊代のバックコーラス&ダンサー二人組のキャプテンが、なぜか麻生真美子と合流。妙な位置づけでの展開に「???」という感じ。どう展開したいのか分からない感じでしたが、'90年代からC.C.ガールズなどで流行り始める「スタイルの良いお姉さん系」の先駆け(?)なんて無理矢理納得しておきましょう。
 女子大生を集めた深夜番組において、パーソナリティでキャラクター性をアピールし、素人臭さを隠し立てしないことによる親近感と、それを逆手にとって下手でも歌を歌わせりゃ面白いように売れてくれる……。オールナイトフジにおけるオールナイターズ、そこからデビューしたおかわりシスターズ(山崎美貴・松尾羽純・深谷智子)の偶発的ヒットは、後のおニャン子クラブという商法に昇華されるプロトタイプだと言えるでしょう。
 松本伊代が稼いだ金を余すことなくつぎ込んでパッとしなかったなどと悪口を言われる少女隊。ま、そのポテンシャルとクオリティは第四章でも書いた通り……と思って読み返したらそれほど書いてませんね。まずは「可愛い系・キレイ系・ボーイッシュ系」という三者三様の分かりやすいキャラクター性でバランスされていたことは特筆すべきでしょう。また、声質が噛み合ってないなどと言われますが、ライブだともっと噛み合ってませんから……と全然褒めてませんね(いや、その噛み合わなさが醍醐味なんですが)。ただまぁ、なんで売れなかったのか不思議なくらいパッケージの完成度の高かったグループと言えるでしょう。  お次はBerryz工房ならぬ元祖ベリーズ。ストロベリーこと大西浩美、ブルーベリーこと松本千恵美、ラズベリーこと伊藤真季の三人。ビジュアル面もそれなりの素材だったので、あとはワンチャンスでメジャーシーンに上がれた感じがしなくもなかったですね。
 おニャン子クラブの後期の立役者である工藤静香は、おニャン子と同じ'85年にセブンティーン・クラブのメンバーとしてデビュー。1曲くらいしか知りませんが、このグループの語るべきトコって、もはや「工藤静香がいたグループ」ということくらいしかないのか……な? その工藤静香は、おニャン子解散後のムーブメントを一手に引き受けたうしろ髪ひかれ隊(生稲晃子・斎藤満喜子)で活躍。
 アイドル~J-popシンガー~作曲家と割と細々とでも息の長い活動をしている山口由子は、木村由美子と鈴木亜希子と共にA-chaでデビュー。A-cha時代はメインで歌ってたのに、そこからソロデビューするまでに少々時間んが空いたものの、その後はシロシンガーとして地道に活動。最近は小倉優子に楽曲提供するなど、アイドルの演じ手から送り手に転身している例かもしれません。
 ちょっと変則的な形で話題をさらったのが風間三姉妹(浅香唯・大西結花・中村由真)。ドラマ「スケバン刑事」の配役のままテーマソングを歌う、番組の企画ユニットのような形ですが、記憶に残っている人は多いでしょう。
 更に希有な存在として一部で絶大な人気を誇っていたのがレモンエンジェル(桜井智・絵本美希・島えりか)。現在では声優として活躍中の桜井智が在籍。18禁アニメの金字塔「くりぃむレモン」のテイストをテレビ企画用に昇華したライト版とも言える「ミッドナイトアニメ レモンエンジェル」。このキャラクターとイメージキャラクターと声優をこなし、かつイベントも精力的に行なうなど、'80年代後期のアイドル&アニメ業界のカルト的大人気を博す位置づけとして、重要な存在と言えます。
 更に更に珍妙な存在としては、深夜番組「グッドモーニング」から登場するオナッターズ(深野晴美・小川菜摘・南麻衣子)や、「笑っていいとも!」のいいとも青年隊の三人を組ませたチャイルズ(磯野貴理子、久留龍子、茂原裕子)なんてのもありましたね。となると「チャイルズクエスト」はアイドルゲームの章で扱うべきだったのでしょうか……?
 徐々に'90年代に突入していきますが、'89年デビューのribbon(永作博美・松野有里巳・佐藤愛子)は乙女塾出身の三人組ユニット。その先駆けであるCoCoの絶大な人気の影であまり目立ったところがない印象なのが非常に残念ですが、永作博美の従来のアイドルとは一線を画すキャラクター性と、3人であるメリットを活かそうと工夫を凝らした楽曲への挑戦など、丁寧な作品作りには好感が持てましたね。
 同じ乙女塾出身者ユニット第3弾(?)としてデビューしたのがQlair(吉田亜紀・井ノ部裕子・今井佐知子)。たぶん、一般的な印象としてはribbonをもっとマイナーにした感じと捉えられてしまうのでしょう。非常に惜しまれるところですが、あまりにもCoCoが強過ぎた弊害かも。申し訳ないですが、私はribbonとどう差別化を図っているのか、コンセプトの違いなどを理解できませんでした。楽曲もribbonよりしつこくない薄味な感じ?というくらいの印象しかったのですが、あまり聞き込んでなかった証拠でしょうかね。
 そうしたCoCoの人気~解散の影で地道かつ着実に活躍していたのがMelody(田中有紀美・望月まゆ・若杉南)。こちらのほうが乙女塾出身系よりいさぎよくアイドルしていた感じです。ただ、一番キレイどころのゆきどんこと田中有紀美が、TVだとなんとなくつまらなさそうに歌ってる印象があるんですが、気のせいでしょうか。ま、それを補って余りある美貌だし、むしろイベントとのギャップもあり全然OKだったりするんですが。
 更に印象が薄いのがCotton(岡田有紀・谷内智美・福田浩子)。途中でメンバー変更とかしてると思ったんですが、かなりうろ覚え。追いかけてないのがバレバレですね。まぁ、一応そういうグループもいたぞ、ということで。
 いや~、相当な文字量になってきましたが、あとは駆け足で。とはいえ、もうこのあとはプッチモニと第1期タンポポあたりでしょうか……で、いいのかな?
 とにかく三人組は難しい……。そういう印象ですね。何が難しいかというと、様々な事例として「とにかく可愛い感じの娘を三人」というケースもあれば「三人の個性が被らない」とか「三人のタイプ(方向性)が違う」ということもあるし、「一人を立てて他はサポート」なんて例もある。
 どれも正解であり、だからといってどれも売れてないケースもあるわけですね。それこそ、女の子のビジュアル面や歌唱力量などを正しく見極め、ケースバイケースで図っていくしかないのでしょう。『アイドルマスター』に準えればプロデュース能力が問われる部分……ある種の醍醐味と言えます。
 その『アイドルマスター』では、ひとまず三人ユニットが上限なのでここでひと区切りさせていただきますが、次回は四人以上のアイドルグループを見ていきたいと思います。

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