BEYOND THE IDOL

 第一章 ◆序文 ~みんなでアイドルマスター~



'80年代アイドル黄金期の洗礼を受けた私にとって、アイドルという言葉は特別な価値観がある。時には崇高で神々しい輝きを放ち、そして時には儚さや空しさなど無慈悲なまでに味わわせてくれる存在……。

  そんなわけで、この『アイドルマスター』のコラムを勝手に書かせてもらおうと思っています、月刊アルカディア編集長の猿渡です。みなさんはアルカディアって雑誌、知ってますかね? 別に宣伝するつもりはないんですが、簡単に言えばアーケードゲームの専門誌です。で、この『アイドルマスター』がアーケードゲームなので、私がこのゲームのコラムをアルカディア誌面で書いたわけですが、それが一部で異様に好評(?)だったんですね。しかし、そのコラムも「第一回」と連載っぽいノリながら、第二回目以降コラムのスペースが無い! こりゃどうしたことじゃ!! ということで、勢い余ってこちらのHPにおじゃました次第です。ま、HPのほうが文字数を考えなくて済むから楽ですな。

 さてさて、唐突に始まった第一回ですが、少々自己紹介でもしておきましょう。冒頭でも記したように、私はごくごく普通にアイドルなるものが刷込まれた世代であり、強いてアイドルファンなんて自覚はありませんでした。「でした」っつーところが肝なんですが、実は私の周りの同世代、あるいは多少前後の世代の人って、アイドルにあまりハマってなかったみたい。特に'80年代って大抵の同世代の人が「途中から洋楽に行っちゃうんだよね」なんてシレっと言ってくれちゃう。あと、30歳前後の社会人で「初めてハマったアイドルがモー娘。」なんて言う人も多かったり(それはそれで全然OKなんですが)。確かに'90年代はアイドルシーンとしては多少寒い時期だったとは思いますが、そう考えるとアイドルってすげーマイナーな存在って印象だったのかしら。
 そんな思いもあり、この『アイドルマスター』がどんなプレイヤー層に受けるのか、非常に興味があると同時に、どんなファンが支持するか未知数だからこそ、このゲームの根底にある「アイドル」に関して、ざっくばらんに書いてみたいのです。なので『アイドルマスター』の攻略法に類する話題は出てこないと思いますので、そのあたりはよろしくです。

 さて、序文もそこそこに自分のアイドル体験をいきなり書くのも何かなぁと思うので、まずは『アイドルマスター』との出会いからスタートしてみましょうか。
 一般的に、こうしたアーケードゲームのお披露目は、業界のビジネスショーに出品されることが通例なわけですね。この『アイドルマスター』も同様なんですが、確か最初は参考出展としていきなりキャラクターとの日常のコミュニケーションだけプレイできたモノでした。第一印象は「かなり無茶なことするなぁ」って感じでしょうか。こっぱずかしいゲームを出すなぁ……なんて。
 そのショーの時、一番記憶にあるのは、小山Pが「さわたりさん! 是非やってください!! なんか、みんな恥ずかしがってやってくれないんですよぅ」なんて言って呼ばれたんですね。で、自分もメーカーの開発者から説明を受けながらプレイするなら恥ずかしくないだろ、と思って座席に座って黙々とやり始めたら、小山Pがどっか行っちゃって、自分ひとりでやるハメに……。「オイオイ、やってくれと言いながら逃げんなよぅ」って感じでした(笑)。

▲これが「かなり無茶な」頃の貴重なショット。
あ、当時からタッチイベントが。
 そして月日が経ち、その次のショーでは、映像出展と言って、メーカーブースのスクリーンにイメージ映像だけ流されて、実機が出展されなかったと記憶しています(といってもそれほど昔のことじゃないんですけど)。で、「『アイマス』のムービーがスゴイことになってるぜ!」という周りの声に後押しされてナムコブースに見に行きました。そこでの印象は、先のショーの「いかにもギャルゲー」というノリを払拭し、ちゃんと歌を歌ってるシーンをフィーチャーしたもの。しかもハイセンスでカッチョイイ!

▲スゴイことになってるムービー。
改めて見てみましたが、ほんとにカッチョよかった。
 このあたりからでしょうか。編集部から取材の申し込みをしつつも、まだ全然リリースにならないってことで「記事にはできないなぁ」なんて時期が続いたのは……。
 そんなある時、確か誌面の企画記事のために取材に赴いたんですね。そこで一通りのゲームの流れの説明を受け、何回かプレイをしたわけです。「なるほどー、ミニゲームで歌・踊り・ビジュアルなどのパラメータを上げ、その真価をオーディションで発揮させる」……簡単に言えばそういう感じとして捉えたンですが、そこでいくつかの疑問点っつーか不満点というか、勝手な持論を展開したんじゃなかったでしたっけ?……って誰に聞いていいのか分かりませんが(笑)
 そこでいきなりブチかましたのが「アイドルたるもの、その特徴である(歌・踊り・ビジュアルの)パラメータを平均的に上げれば良いなんてもんじゃない!」ってこと。むしろ、何かが欠けているということが、そのアイドルの魅力になっていたり、アンバランスの妙が良い方向に個性を伸ばしていたりする……それゆえに、優等生的なパラメータ上げゲームだったらやる気がしないっつーか、オレはプレイしません。なんて失礼なことを言っちゃったわけです。
 まぁ、あくまでゲームなので、それを成立させるためには一定量のパラメータは必要でしょうし、あまりにも悪いバランスが成立するのかどうかは定かではないです。ただ、勝手なことを言わせてもらえば、自分は歌が下手なアイドルって平気なんですね。平気というか、むしろほほ笑ましくて好きなくらい。いや、大好きと言ってもイイ(笑)。こういうと、歌が上手いアイドルを否定して聞こえるらしいので弁明しておきますが、歌が上手いのももちろんOK。けど、歌が下手でも何らかの要素と絶妙にバランスされていれば、誰にも真似ができない個性や特徴となって人気の一助になると思うンですよね。
 とまぁ、そういった感じのことを散々語るだけ語って、開発の方を困らせたんだと思います。

 でまぁ、その時あたりから、「アレ? さわたりさんって、そんなにアイドルに詳しかったでしたっけ?」なんてことが囁かれるようになったわけですね。私自身そういった自覚は無かったんですが、じゃいっちょコラムでも何でも書いちゃうよ、なんて勢いで言っていたことも、このコラム執筆に繋がってるわけです。
 ではでは、開発者の方に言った「アイドルは歌が下手でOK!」……というのは極論だとしても、自分がどういうアイドルを体験してきたか、そのあたりを分かってもらったほうがいいのかな、なんて思いもあり、次回はアイドルの原体験を書いてみたいと思います。


第2回


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