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推理ドラマ:伊織を探せ!(前編)
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■ 第一部
・前説
やよい (やよいなりに精一杯偉そうに演技する感じで)
「皆さん、おはようございます。高槻やよいです。
今日は、私達765プロダクションのアイドルに
ふりかかった、ある恐ろしい事件のことを、皆さんにお話ししたいと思います。
うう、思い出しただけでも、体が寒くなっちゃいます。
だから、夏はこのお話を思い出せば冷房代がういてお得です!
おっと、いけません、話を進めましょう。(少し威張る感じで)
それは、コンサートがはじまる前の出来事でした……」
律子
「どうも、お疲れ様でしたー。
ふー、えーと、次は音響スタッフとの打ち合わせね。
あー、でも、もう2時か~~。
どうしようかな~…」
≪春香登場≫
春香
「律子さーん、おはようございます!何をやってるんですか?」
律子
「おはよう、春香。何してるのって、そんなの決まってるじゃない。
今日のコンサートの下打ち合わせ」
春香
「あれ?確か、最終リハって、3時のおやつの時間からですよね?」
律子
「おやつは余計。まあ、確かに3時から開始なんだけど、ほら、事前に
情報収集しておいた方が、ムダがないでしょ。まずは…」
≪真登場≫
真
「おっはよー!お二人さん!
相変わらずマジメなこと言ってるなー、律子は」
春香
「あ、おはよう、真!」
律子
「おはよう、真。マジメなのは当たり前でしょ。だって私は、秋月律子なんですからね」
春香・真
「おおー!言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい自信だーっ!」
律子
「言葉の意味はわかるでしょ!」
真
「アハハ、冗談だよ、冗談。ところで、3時の最終リハだけどさ、
たまには、お菓子でも食べながら楽しくやろうよ!」
春香
「うわー、賛成!
実は、私、今日は朝からシュークリームを作ってたの!たくさんあるよ!」
律子
「ちょっと何いってるの?打ち合わせは打ち合わせ。おやつはなしです!」
春香
「えーっ!!ひどーい!!うう、ぶつぶつ…」
≪あずさ登場≫
真
「お!あずささんだ!おはようございます、あずささん」
あずさ
「あ、あら~、みんな、こんなところにいたのね~~」
律子
「信じられない…まさか、あずささんがこんなに早い時間に来ているなんて……
今日は迷子にならなかったんですね?」
あずさ
「それは、あの~、今日の打ち合わせは3時からでしょう。
毎回遅刻ではプロデューサーさんに申し訳ないから
今回はね、昨日の夜にお家を出発しておいたの~」
春香
「うわー、あずささん、頭いいですね!」
真
「あずささん、ボクも今度からそうします!」
律子
「どっちもツッコミが違う!
大体、今の話を本気にしてどうするのよ?冗談ですよね、あずささん?」
あずさ
「冗談?そうねえ……うふふ……」
真
「う、何だか、やっぱり冗談ではないような気が……」
春香
「そ、そうかも……」
≪やよい・雪歩同時に登場≫
やよい
「いえーい!みなさん、おっはようございまーす!!えへへ!」
雪歩
「ああ、あの。あの皆さんおはよう、ございます」
あずさ
「あら~、やよいちゃんと雪歩ちゃんおはよう~」
春香
「やよい、おはよう!今日も元気な挨拶だね!」
やよい
「えへへ」
春香
「それにひきかえ、雪歩もさあ、ちゃんと皆に聞こえるように挨拶しないとダメだよ」
雪歩
「ええええ!うぐ、挨拶ちゃんとしたんだけどな……」
真
「雪歩さあ、そんな声じゃ聞こえないよ。
もっと腹の底から大きな声を出さないとダメだよ、こんな感じで。
みなさん、おはようございまーすっっ!!!!」
やよい
「うわ~、真さん、かっこいいです!」
律子
「声がでかすぎるわよ!」
雪歩
「あの、じゃあ、私もう1度やってみるね。せーの」
≪亜美登場≫
亜美
「いえーい!みんな、おっはよーーっ!!!!」
雪歩
「おはようございまーす…」
律子
「うーん、ベタな展開ねえ」
亜美
「ゆきぴょん、ごめんね!ねえねえ、ところで、みんなそろって何やってたの?
なんか楽しいこと?」
あずさ
「そうねえ。皆がいるだけで楽しいんだから、楽しいことをしていたのかも
しれないわねぇ~」
やよい
「ねえねえ、亜美?今日は1人なの?真美はどこにいるの?」
亜美
「うん?真美はねえ、真美は、真美は……
グス……みんなのココロの中にいるよ……」
律子
「死んだ訳でもないのに、不吉な言い回ししないよーに!
で、亜美?真美はどこに行ったの?」
亜美
「え?なんだか兄ちゃんと慌ててどこかに走ってったよ。3時までには
戻るって言ってたけど。お買い物かな?」
雪歩
「ええー、プロデューサーと2人でお買い物なんて、うらやましいなあ……」
真
「おお!雪歩、大胆発言じゃん!」
雪歩
「え?あわわわ、そ、そんな、あの、えと、私、今日はお昼に起きちゃってお茶を買いに
行けなかったから、うらやましいなあって言っただけだもん」
あずさ
「うふふ、その慌てぶりが怪しいわねえ」
律子
「あずささんまで雪歩をからかわないで下さい。
全く、肝心な時にいないんだから、プロデューサーは」
春香
「ねえ、亜美? 千早ちゃん見なかった?
私、千早ちゃんとおやつを一緒に食べようねって約束してたの」
亜美
「えーと、そういえば、さっき走ってこっちに来る時に
千早お姉ちゃんらしき影を追い抜いた気がする」
≪千早登場≫
千早
「みんな、こんなところにいたのね」
春香
「おはよう、千早ちゃん!」
千早
「おはよう春香。あれ?あずささんもお早いですね」
律子
「千早でも、やっぱりそこは驚くところなのね」
春香
「ねえねえ、千早ちゃん。皆揃ったみたいだから
皆でおやつ食べようよ!」
千早
「別にかまわないけど」
あずさ
「あら、いいわねえ。私、昨日の夜から何も食べていないから
おなかが空いてしまって」
真
「う、やっぱり、昨日の夜には家を出たという話はマジなのかな……」
やよい
「あの~ちょっと待ってください、春香さん。全員いないですよ。伊織ちゃんがいません」
雪歩
「あれ?本当だ。何だか珍しいね。伊織ちゃん、根がマジメだから
いつもすごく早く来るのにね。
でも、今日は何だか静かだなあと思ったら、そっか
伊織ちゃんがいなかったんだ……」
亜美
「あー、ゆきぴょん、そんなこと言ってるの、いおりんに聞かれたら
どうするのかなー、うっふふー」
雪歩
「えーっ!ちょっと亜美ちゃん、今のは内緒にしておいてよ~」
千早
「亜美、萩原さんをいじめてはダメよ」
亜美
「うう、ごめんなさ~い」
千早
「律子、水瀬さんがいつ頃家を出たのか、確認しておいた方がよくない?」
律子
「そうね、リハまであと50分くらいだから、一応確認しておきますか」
やよい
「私、伊織ちゃんの家に電話して聞いてみます!」
律子
「うん、お願い」
(・・・3秒の間・・・)
律子
「あの、やよい、電話をかけるんじゃないの?」
やよい
「うう、電話貸してください~~。事務所から貸してもらってる電話は
今日お家の電話になる日なんです~~」
律子
「ぐっ、哀しすぎて怒る気にもなれないわね」
真
「ほら!やよい、電話」
やよい
「ありがとう真さん!」
♪Trrrr…
…ガチャッ
やよい
「あ、もしもし、わたし高槻やよいと申します。
今日伊織ちゃんは……
え、家にはいない?随分前に、仕事に出かけた、ですか。
はい、わかりましたー、ありがとうございまーす」
ガチャッ
真
「伊織、家にいないって?じゃあ、やっぱり、会場には来てるのかな?」
春香
「この会場は初めてだし、かなり広いから、迷子になってるのかも」
あずさ
「伊織ちゃんはしっかりしてるから多分大丈夫じゃないかしら。
でも、、まあ、念のために私、ステージの方を探してきます~」
春香
「あずささん、それ、明らかに二重遭難を誘発します!」
真
「あはは、あずささんは、ここに残っていて下さいよ。
ここはいっちょ、体力のある奴らで探しに行ってきます!
春香・亜美・やよい・律子、いくぞ!」
春香・亜美・やよい
「「「はーい!」」」
≪春香、亜美、やよい、真、会場の外へ≫
律子
「ええ!ちょっと、待ちなさいよ!
他にも方法はあるでしょ!それに、どうして、私が体力のある組なのよ!
あ~、もう、仕方ないなあ。
千早、雪歩、あずささんをよろしくね。あの4人に付き合ってくる」
千早
「はい」
雪歩
「は、はい」
≪律子、会場の外へ≫
■ 第二部
・中説
やよい
「こうして、伊織ちゃんを探すために、みんなで、情報収集することになりました。
皆、ちょっとした冒険くらいの気持ちでいました。
けれど、情報が集まって行くにつれて……」
あずさ
「もう~、私が1番年長さんなのに、律子さんってどうして
いつも私を子供扱いするのかしらね~」
千早
「そうですね。おそらくなのですが、あずささんは精神年齢が低いというか…」
雪歩
「ち、千早ちゃん、言い方がストレートすぎるよ~」
あずさ
「あら~気にしなくていいのよ、雪歩ちゃん。
実際私は、いつも周りに迷惑ばかりかけて、子供みたいだし。
早くしっかりした大人になりたいわ」
千早
「同感です。
精神的にも経済的にも、誰にも頼らずに生きて行けたらいいなと
私も常々思っています」
雪歩
「うわ~、千早ちゃんはいつも自分のことをマジメに考えてるんだな~。
私なんて、ダメダメだから、今日を生きるのだけで精一杯なのにな」
あずさ
「それは大変ねえ。でもまさか、ご飯時にうまい棒しか食べられないほど
苦しいわけでもないでしょう?それに、雪歩ちゃんにしか
できないことも、たくさんあるわよ」
雪歩
「え?え?どんなことですか?男の人とうまく話せないのは
私だけだと思いますけど、あまり役にたったことないですよ」
あずさ
「例えば、伊織ちゃんを探すために、雪歩ちゃん」
雪歩
「はい!」
あずさ
「穴を掘るのよ」
雪歩
「ええええええ!」
千早
「あ、あの、あずささん、水瀬さんはトリュフや松茸ではないですよ?」
あずさ
「うふふ、伊織ちゃんがキノコではないことくらいわかってるわよ。
あら、でも、ちょっとキノコっぽいかもしれないわね~」
千早
「そう……ですか?」
雪歩
「あの、穴を掘る理由はあるんですか?」
あずさ
「もちろん。だって、伊織ちゃん、もしかしたら悪い組織の人に捕まって、
地面の下に埋められているかもしれないでしょう?」
千早
「そ、その確率はきわめてゼロに近いと思いますが…」
あずさ
「うふふ。でも、ここにいて何もしないよりは、全然いいでしょう?
伊織ちゃんの為にしてあげられることは、してあげましょう」
雪歩
「あの、何だか絶対に間違っている気もするんですけど、そんな気もしてきました。
私、がんばって掘ります!よーっし、やるぞーっ!」
千早
「あずささん、前言撤回します。あずささんは、おそらく…一番大人です」
あずさ
「うふふ。じゃあ、がんばって掘りましょう~」
律子
「やよい~、ハアハア、ちょっと止まりなさ~い(少しバテ気味で)」
やよい
「あ!律子さんも来てくれたんですね!」
律子
「ハアハアハア、私は頭脳労働担当なんだから、あまり走らせないでよね。
やよいに聞きたいことがあって追いかけてきたの」
やよい
「聞きたいこと?何ですか?
あ、スーパーの特売情報ですか!えーと、今日は
イトーシローヨーカードーで冬物一斉値下げ市と、週末おまとめお買い得セール
をやっていて、あとジャストでオージービーフフェアと……」
律子
「やよい、アンタ毎日そんなこと覚えてるの?
どうりで、今日も朝から事務所の新聞を熱心に読んでる訳だ。
まあ、冬物一斉値下げはいいかもね」
やよい
「はい!最大なんと、70パーセントオフです!」
律子
「細かいところまで覚えてんのね~。うん?あれ?
今のやりとりで聞こうと思っていたこと……忘れちゃった……」
やよい
「オージービーフフェアの目玉ならすき焼き用の1パック380円のお肉ですよ?」
律子
「特売のことじゃないわよ。
う~ん、何だかとっても重要なことだったと思うんだけど…・・
………?
まあ、そのうち思い出すでしょう。
仕方ない、思い出すまで、とりあえず色々な場所を探していきましょ」
やよい
「はい!あ、私さっき控え室の方は探しましたけど、伊織ちゃんは
いませんでした」
律子
「そう。じゃあ、次は衣装室の方でも探しましょうか」
やよい
「はい!早く伊織ちゃんの声が聞きたいですね!」
律子
「やよい……アンタって本当にいい娘ねえ」
春香
「ねえー亜美ー、そっちの方はどう?」
亜美
「ううん、いないよー。亜美、かくれんぼなら得意なんだけど、
どちらかというと隠れる方が得意だから、結構手こずるかも~」
真
「伊織は別に隠れてる訳じゃないと思うんだけど」
亜美
「あれ?あそこでスポットライトに照らされているのは……もしかして……」
真・春香
「え?何何?」

亜美
「ああ!あのウサギさんはいおりんのぬいぐるみだ!とってくる!」
真
「お!これは確かに、伊織のぬいぐるみだな。でも、どうして、ピンスポの下に?
お、うわ~~意外とフワフワなんだなあ……」
春香
「そんなことしてる場合じゃないでしょ。
ウサちゃんがここにあるっていうことは伊織が会場に来てるのは
間違いないみたいね。この近くにいるのかな?」
亜美
「えー、いおりんがウサこをほっといてどこかに出かけちゃうなんて
ありえないよー。
ああ!もしかしたら、いおりん、ゆーかいとかされちゃったのかな?」
真
「ええ、ゆーかい!!」
春香
「真、声が大きいわよ!亜美、そんなことある訳ないでしょ!
会場には警備員さんもたくさんいるのよ」
亜美
「でもでも、ルパンみたいな人だったら、警備員さんに化けるのも
うまいし、奴はとんでもないモノを盗んでいきました、アナタのココロですって
感じなんだよ!」
春香
「そ、そうかな?」
真
「春香、これはグズグズしていられないよ!捜索をパワーアップしないと!」
亜美
「うんうん!赤い色の少佐みたいに、3倍でいかなきゃ!
よーしっ、いくぞー!」
春香・真
「「はーい、えいえい、おーっ!!」」
雪歩
「はう~~~、やっぱりコンクリートはむずかしいなあ……
コア・ドリルとかがないと無理だなあ……
うん?あれれ?ねえねえ、千早ちゃん?」
千早
「どうしたの萩原さん?」
雪歩
「あの、あずささんはどこにいったのかな?」
千早
「あずささん?確かさっきまで、私の横にいたんだけど……」
雪歩
「ま、まさか、迷子になったんじゃ……」
千早
「どちらかというと自分からこっそり離れていったような気もするけど」
雪歩
「落ち着いてる場合じゃないよー。律子さんにあずさんをよろしくねって
言われてたんだから、責任問題だよー」
千早
「そうね……。それじゃ、すこし辺りを見てくるから」
≪千早退場≫
雪歩
「あれ?ちょっと、千早ちゃん、置いていかないでよ~。
コンサート前なのに、こんな皆バラバラじゃマズイよ~~。
うう、千早ちゃん待って~~」
やよい
「ふうー。ねえ、律子さん。伊織ちゃん、トイレにもいませんねー。
本当にどこにいるのかなー?」
あずさ
「そうねえ。でも、多分しっかり者の伊織ちゃんなら大丈夫だと思うんだけど~」
やよい
「わわっ!いつの間にか律子さんが巨乳になってる!
あれ?律子さんじゃなくて、あずささんだ?」
あずさ
「やよいちゃん、久しぶりね~」
やよい
「はい! あの~ところで、いつの間にか律子さんとはぐれちゃったみたいです。
律子さんを見ませんでしたか?」
あずさ
「あら、奇遇ね~。私もまた迷子になってしまったみたいなの~」
やよい
「えへへ!じゃあ、お仲間ですね!」
あずさ
「そうね。うふふ」
やよい
「えへへ!」
あずさ
「ところで~、やよいちゃんはここがどこかわかってるのかしら?」
やよい
「いえい!わかりません!」
あずさ
「まあ!元気が良くていい返事ね。うふふふ」
やよい
「えへへへへ」
あずさ
「うふふふふ」
春香
「ねえねえ、真」
真
「うん、どうしたんだ春香?」
春香
「突然なんだけど、実は私は推理が得意なの」
真
「本当に突然だな」
春香
「この前ね、名探偵の子供が出てくるマンガを全部読んで推理に目覚めたの」
真
「へえー、で、それがどうかしたの?」
春香
「だから、ここは頭脳で解決しようと思うの。
手がかりは、スポットライトに照らされていたぬいぐるみね」
真
「おお、何だか春香、いつもより賢い感じがするなあ。
それで、何がわかったんだ?」
春香
「うふふ、うさぎは英語で『ラビット』でしょ?頭文字はR。スポット『ライト』も頭文字はR。
だから、これは、R、すなわち、右の方向に伊織がいるという
ダイニングメッセージという奴だと思うの!」
真
「ダ、ダイニングメッセージ……。何だかおいしそうなメッセージだな。
でもさ、あの、灯りの『ライト』の頭文字って、Lじゃないの?」
春香
「え?…そういわれたら、そんな気もしてきた…。あ、じゃあ、ウサちゃんの
手が指し示していた方向に伊織ちゃんはいる。間違いないわ」
真
「それで、その指し示した方向っていうのはどっちだった?」
春香
「え?いや、それは……えへへ、私は覚えてないの。亜美ならわかるんじゃないかな?」
真
「そうだな!でも、1つ問題がある」
春香
「え?何?」
真
「どうやら、亜美も迷子になったみたいで…さっきからいないんだけど。
アハハ!………事態はどんどん悪化してるな」
春香
「まあ、まだ時間はすこしあるから、がんばろうよ、真」
真
「無意味にポジティブだな春香は」
春香
「それ、ほめ言葉として受け取っておくね!」
律子
「はあ~……案の定、二重遭難が発生してるわね~。
雪歩、だからあずささんをしっかり見ておくようにって言っておいたのに。
あの人は、瞬きしている間に消えてしまうわよ」
雪歩
「うう、ごめんなさい。あずささんって、何だか手品みたいですね」
律子
「どんな感想だ。あー、このままじゃラチがあかないわね。
どうしよう…… いつの間にかやよいもどこかに行っちゃうし。
あ!さっきやよいに言おうとしてたこと思い出したわ」
雪歩
「え?何を言うつもりだったんですか?」
律子
「伊織の携帯電話に電話すればいいじゃないの、って言うつもりだったの。
どうして、こんな簡単なことをしなかったのか、もう、自分に腹が立つわ」
雪歩
「そうですね、じゃあ、早速電話しましょう。律子さん、お願いします」
律子
「ステージ衣装のまま携帯電話を持ち歩くほど、私は酔狂な人間じゃないわ」
雪歩
「あう、わ、私も電話は控え室に置いてきてしまいました。テ、テレパシー
じゃダメでしょうか?」
≪千早戻ってくる≫
千早
「萩原さん、律子、電話なら、さっき、私がかけてみたわ。あ、萩原さん。
テレパシーはまた今度ね」
雪歩
「うう」
律子
「千早……それで、どうだったの?」
千早
「誰も出ないわね。家に置き忘れている訳でもなさそうだし。
少し落ち着いて行動した方が良いと思う」
律子
「う~ん、これ以上動いても仕方がないわね。プロデューサーを待ちましょう。それが一番。
とにかく、ステージに向かいましょう」
千早
「そうね、それがいいと思う」
律子
「じゃあ、途中で迷子中のメンバーを捜索しつつ、ステージへ向かう。
いいわね?行くわよ!」
千早・雪歩
「「はい」」
亜美
「もう~、2人ともだらしないなあ。迷子になっちゃダメなんだよ。
亜美に会えたから良かったものの」
あずさ
「ごめんなさいね~、亜美ちゃん。世話かけるわねえ」
やよい
「ねえねえ、亜美ちゃん。ところで、ここ、男子のお便所だよ?
どうしてこんなところにいるの?」
亜美
「んっふっふ~~、それは、亜美も道が良くわからないからでーす!」
やよい
「あ、そうかー!なるほどー!」
あずさ
「今ここにいるのも運命なのかしらね~。
ということは、ここで私の『運命の人』に出会う可能性があるのかしら?
でも~、やっぱり男子便所で運命の人に出会うというのも
どうなのかしら~~」
やよい
「あずささん、何しゃべってるんですか?」
亜美
「運命の人っておトイレの掃除の人か何かなの?」
あずさ
「さあ、どうでしょうか?私は私を愛してくれる、そして私も愛すること
のできる男性でさえあれば、例え相手が宇宙人でも深海魚でも……」
やよい
「うっうーーっ!何か感動的なお話だね」
亜美
「話をしているロケーションは最悪だけどね」
あずさ
「そ、そうね。早くでましょうね。
さきほどから、便器の前でたくさんの男性が固まっていらっしゃいますし……」
やよい
「はーい!では、みなさん、おじゃましましたー!!」
亜美
「ねえねえ、ところでとりあえずさ、ステージに行かない?
もう他のみんなが『いおりん』のこと探しちゃったかもしれないよ?」
あずさ
「そうねー。多分伊織ちゃんなら大丈夫だと思うわよ~。
ところで、亜美ちゃん、今日はしっかり屋さんね」
亜美
「ふふん、亜美は1人の時だと、いつもよりがんばんないといけないの!
そうしないと、真美と交代した時、真美が困っちゃうからね!」
やよい
「うわーっ!亜美ちゃんスゴイね!よーっし、私もがんばるぞ!
ステージ1番乗りですーっ!!」
≪やよい、ダッシュで退場≫
亜美
「わわ、やよいっち!いきなりかけっこなんてズルイよ!
よーし、亜美もいくぞーっ!いえーい!」
≪亜美、後を追って退場≫
あずさ
「あら~~、どうしましょう。
あ、あの、おトイレにいらっしゃる皆さん、よろしければ私を
ステージまで連れて行って、
あら、OKですか!ありがとうござい……え、あ、まずは
ここから出て行ってくれですか。
そ、そうですね。コホン。あの、大変失礼いたしました……」
≪あずさ退場≫
律子
「ふう~、どうにか全員そろったわね。結局、皆の情報を総合すると
伊織のぬいぐるみはスポットライトの下に置いてあって、携帯電話はつながらない」
千早
「そして、3時まであと15分しかない……ということね」
あずさ
「さきほどのお話にあった、プロデューサーさんをお待ちするという
のが、とりあえず一番良いのではと思います」
真
「それは、そうすべきだと思うけど、その後はどうするんですか?!
ボクは、まだ探していないところを、探しに行くべきだと思う!」
律子
「真、それは効率が悪いわよ。それより、もっと頭を使いましょうよ」
真
「ふん、偉そうなこと言ったって、具体的にどうするんだよ!」
春香
「真、その言い方はひどいわよ!
でも、律子さん、私もいいアイディアがない状態だったら
少しでも走って、伊織ちゃんを探してあげたいです」
やよい
「私もです」
亜美
「亜美も」
千早
「ちょっと待って。少し皆で冷静に話し合いましょう。
そうすればきっと良いアイディアが出てくると思う」
あずさ
「そうね。変に動かないほうが、良いと思うわ」
雪歩
「私も、ゆっくりとお茶でも飲みながら、考えた方がいいと思う」
律子
「ふう、意見はまさにまっぷたつね。コンサート前にこんなことになるなんて」
真
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
雪歩
「真ちゃん、そんなに大きな声を出さないでよ。うう、ヒックヒック」
亜美
「多分いおりんはゆーかいされちゃったんだよ!みんなで、もう一度探しに行こうよ!」
千早
「亜美、だからそれは」
亜美
「やだやだやだやだやだーっ!行くったら行くのーっ!」
律子
「少しは黙りなさい!亜美!」
亜美
「えっ、えっ、う、うわ~~ん!!うわ~ん…」
あずさ
「亜美ちゃん、大丈夫だから、泣きやんで、ね?」
春香
「ああーどうしよう……もう、こうなったらプロデューサーさんに
決めてもらうしかないよぉ」
バタン☆
≪プロデューサーと真美、登場≫
春香
「あ……プ、プロデューサーさん!待ってたんですよ!」
律子
「あ、アンタねぇ!こんな大事な時にどこ行ってたのよ!!
でも、今はお小言より、もっと急ぎの用件があるの!!」
千早
「プロデューサー、実は水瀬さんがまだ集まっていません。
しかし彼女は会場には来ているみたいなのです。
水瀬さんを探すために、私と律子、あずささん、萩原さんは、冷静に考えたいのです」
真
「ボクと、春香、やよい、亜美は、考えるより先に動こうという
意見です」
春香
「プロデューサーさん」
千早・雪歩・あずさ・律子・やよい・真・亜美
『お願いです。どうするかを決めて下さい!』
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